「はじめに」
経営者であれば融資や出資といった資金調達について、頭を悩ませることがあると思います。資金調達を受けるためには、投資家や債権者に、会社の経営が安定していると示す必要があります。
会社の経営が安定していることを示すのに、提示するものが財務諸表です。
この記事ではその中から賃借対照表について取り扱っていきます。
賃借対照表は会社の財産状況をまとめた書類です。
投資家や債権者は財産の状況を確認し、会社経営の「安全性」がどの程度かを読み取ろうとします。
なおここでいう会社の「安全性」とは、支払い能力があること、財務上健全であるということを指します。
本記事では投資家や債権者が賃借対照表のどの部分をみて、会社の「安全性」を判断するのかを見ていきます。
「賃借対照表の概要と損益計算書とのつながり」
「賃借対照表とは投資家や債権者に会社の資産状況を伝える書類」
賃借対照表は「balance sheet」(B/S)とも呼ばれ、左側の資産と右側の負債+純資産が同じ数字になることが特徴です。
この賃借対照表は会社の財政状況を表しており、右側が資金をどのように用意したか、左側は資金の使い道を表しています。
この書類は法律で作成を義務付けられているため、必ず作成しなければなりません。
「賃借対照表と損益計算書の繋がり」
賃借対照表とつながりが深い書類としては、損益計算書があります。
損益計算書は会社の利益を伝えるための書類です。
科目 | 金額(円) |
売上高 | |
売上原価 | |
売上総利益(粗利) | |
販売費及び管理費 | |
営業利益 | |
営業外収益 | |
営業外費用 | |
経常利益 | |
特別利益 | |
特別損失 | |
税引前当期純利益 | |
法人税及び住民税及び事業税 | |
当期純利益 |
詳しい内容については損益計算書の記事で説明をしますが、この書類で重要なのは一番下の当期純利益です。
この項目が積み重なることで、賃借対照表の純資産の項目にある繰越利益剰余金が増えていきます。
例えば次年度の繰越利益剰余金は
(前年度までの繰越利益剰余金 + 当期純利益) - 配当金 - 利益準備金 - 別途積立金
という計算方法で求められます。
「賃借対照表の重要項目」
「賃借対照のつくり」
賃借対照表は右側に負債と純資産、左側に資産という作りになっています。この右側の合計と左側の合計は必ず同じ数字になることが特徴です。
資産 | 負債 | ||
流動資産 | ¥1,150,000 | 流動負債 | ¥1,000,000 |
現金 | ¥150,000 | 買掛金 | ¥1,000,000 |
売掛金 | ¥1,000,000 | 固定負債 | ¥2,400,000 |
固定資産 | ¥5,000,000 | 長期借入金 | ¥2,400,000 |
土地 | ¥3,000,000 | 純資産 | |
建物 | ¥2,000,000 | 株主資本 | ¥2,000,000 |
繰延資産 | ¥0 | ||
利益剰余金 | ¥750,000 | ||
合計 | ¥6,150,000 | 合計 | ¥6,150,000 |
*本来はそれぞれの項目の中にさらに細かい科目がありますが、ここではわかりやすくするためにあえて省略し、実際の表よりも簡単なものを掲載しています。
この中では赤字の項目が大切です。
各項目について簡単に説明すると
・「流動資産」:1年以内に返済できる可能性が高い資産
・「流動負債」:1年以内に返済しなければならない負債
・「固定資産」:1年以上使い続ける物をはじめとした長期的に使う資産
・「固定負債」:債務期限が1年を越えて到来する負債
・「繰延資産」:会社または個人事業主が支出する費用のうち、その支出効果が1年以上におよぶ資産
「総資産のうち自己資本が占める割合」
総資産のうち自己資本の占める割合のことを「自己資本率」といいます。
自己資本率は自己資本(返済不要の資本)÷ 総資本(自己資本+他人資本)で求めることが可能です。
自己資本率が高いということは、会社の独立性が高いということです。反対に、自己資本率が低いということは、他人資本の影響を受けやすいということです。
賃借対照表で使うの項目は純資産と資産です。
上の賃借対照表を使って自己資本率を計算すると
2,750,000 ( 純資産 ) ÷ 6,150,00 ( 資産 ) = 44.71%
で44.71%になります。
30%~40%程度であれば安定しているといえ、それを超えていれば倒産しにくいといえます。
今回の場合は40%を超えているので、倒産しにくい企業であるといえます。
「流動資産の比率はどの程度か」
資産のうち、すぐに現金化できる流動資産を、すぐに支払わなければならない流動負債で割ったもののことを「流動比率」といいます。
流動比率は短期的な支払い能力を表します。
これが高ければ、短期的には安定しているとみることができます。
上記の表から流動比率を計算してみると
1,150,000 ÷ 1,000,000 = 115%
この流動比率が100%を超えていれば、短期的な費用を賄えているということになります。
この計算式では115%なので、短期的な支払いを賄えているといえますね。
また、より厳密に短期的支払能力を見る指標に「当座比率」というものがあります。
当座比率は、流動資産のうちすぐに現金化できる当座資産を流動負債で割った数字です。
「銀行融資残高はいくら残っているか」
銀行融資残高がどのくらい残っているかというのも重要な項目です。
借入金が多ければ多くの支払いが残っているということになるので、融資を行った場合、貸したお金が返ってくるのかという不安を相手に与えてしまいます。
「投資家や債権者が賃借対照表から読み取るのは会社の安全性」
投資家や債権者は賃借対照表から会社の資産状況をみます。
資産状況を確認するのは、会社経営が安定しているかどうかを確認するためです。
会社経営が安定しているかどうかを確認するための指標として、先ほどあげた自己資本比率や流動比率があります。
1年以内の支払いがとどこおっていては融資や出資が受けづらくなるため、流動比率には特に気を配る必要があります。
また会社の安定性をみる代表的指標である自己資本比率を用いて、どれだけ他人資本の影響を受けない経営が出来ているのかを知ることができます。
「さいごに」
投資家や債権者は、賃借対照表から会社の安全性、つまりは会社の存続に支障がないかを知るすべとして賃借対照表を読みます。
特に短期的支払能力や、会社が他社に頼らず経営出来ているかということを知ろうとします。
そのため、経営者は短期的な支払いや他人資本の入れすぎによる経営の悪化に気をつける必要があります。
しかし一方で、他人資本を大量に投入して成長を目指す戦略もあるので、自分の会社をどのように経営していくかはよく考えるべきです。
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